富岡製糸場

2018年11月8日(木曜日)、富岡製糸場に行って来ました。
2014年6月に世界遺産に登録されたあの「富岡製糸場と絹産業遺産群」の富岡製糸場です。
車で駅前を通ってみた。イメージキャラクターの「お富ちゃん」が立っている。乗降客はいない。街の中は駐車場の案内などが整然としていて、さすが世界遺産の街である。歩いてみると、富岡製糸場までの案内はしっかりしていて、知らなければ一生歩かなかったであろう路地も歩く事が出来た。
入口から入場した。正面に国宝の東置繭所がある。木骨煉瓦造のとても大きな建物だ。アーチの頂点の要石には「明治五年」の銘が刻まれている。明治という時代のエネルギーを改めて感じる。煉瓦を焼くところから始まってこの大きさである。ほんの5~6年前まで、新選組が斬り合いをしていたというのに。
お客10人位でガイドをして頂いた。その後自由見学になって見に行った、同じ国宝の西置繭所は覆いがかけられて保存修理作業が行われていた。
横浜で作られたという大きな鉄製の水槽も存在感がある。明治の「殖産興業」がここから始まり、「富国強兵」へ突き進んで行った事を思うと、鉄の水槽が「軍艦」に見えなくもなかった。
見終わったのが昼頃で、正面の通りを少し歩いてみた。おしゃれなカフェや茶店などがあるが、平日だったせいか人は少なくて、やっていない店もあった。世界遺産登録の直後に来た人達からは「すごい混雑」と聞いていたのだが・・・。歩いて食堂を探す程でもないか・・と、車で少し走った国道沿いのファミリーレストランで昼食をとった。
旅から帰ってしばらくしたら、新聞に富岡製糸場の2017年の入場者数が登録年の入場者数の半数以下になったとあった。
資料から数字を拾ってみた。
2014年・・・1337720人(登録した年)
2015年・・・1144706人
2016年・・・・800230人(4割減)
2017年・・・・637288人(5割減)
2018年・・・・519070人(6割減)
また、今後10年で維持費が100億円程度見込まれる・・。ともあった。
歴史的価値のある文化財を「登録」して多くの人々に見ていただくのは大事な事ではある。しかしそれを「観光客誘致」という側面でとらえてしまうと・・・。
世界遺産登録→観光客誘致→物見遊山的観光客の一時的増加→観光客減少→維持費負担が残る・・・となる。
「石見銀山」の時にも議論になった話である。「登録」がなければ来てもらえなかったはずの(物見遊山的観光客)の皆さんにも見て頂いた事の価値はある。文化財は見て頂かなければ・・無かった・・と一緒だから。 そして「登録」がなければ、行政から大きな資金を動かすことも出来なかったであろう。
岡谷の「近代化産業遺産」に関わる人々の間でも同じ議論はある。・・もっと大勢の人に見ていただきたい・・近くに食事の出来る所が有れば・・茶店が有れば・・ああもすれば・・こうもすれば・・まさかミッキーやシンデレラに来てもらってダンスをしてもらうというのも・・いや、それもありか?・・いや、いくらなんでも・・投資対効果が・・ありか?・・なしか?・・ああだ・・こうだ・・
今回の世界遺産訪問は、文化財に関わる者として考えさせられる旅であった。
(2020年の富岡製糸場の入場者数は、西置繭所の修理が終わり公開された事もあって、少しだけ前年比増になったそうです)    K・M記